鳥
かもめのゆりこ

- かもめ
紋別の漁港へゆくと
釣り人が捨てる魚を欲しがって
沢山かもめがよってくる
あるいは海面の魚を狙っては
水面のすれすれを飛びながら
冷たい海にも首を突っ込む
なかなかうまく捕らえられずに
せっかくとった小魚も
仲間に追いかけられた末
とりあげられたりしてしまう事もある
寒い港を生きる鳥達
かもめのゆりこはまだ子ども
まるでぼんやりな茶色の羽で
冷えたオホーツクの海を飛ぶ
かもめのゆりこ
漁港で一枚カレイを拾った
どの釣り人が捨てたのか
素敵に大きなカレイが一枚
かもめのゆりこは堤防の上
足元にそっとカレイを置いて
じっと見つめる
さてどうしたらよいのだろう
かもめの口は横には開かない
ホッケだったら丸呑みするが
チカであったら軽々呑むが
この平たいお魚はどうして食べるものなのか
かもめのゆりこ
何回か口先に咥えて丸呑みしようと上を向く
それでも当然平らな魚は
口から奥へ入っていかない
傍には二羽の大人のかもめ
横取りするでもないままで
じっと見ているゆりこのことを
平らな魚は食べられないと知っていて
だけどやっぱり気にはなるのだ
どこへも行かず
かもめのゆりこ
置いたカレイを嘴で
トントントン突付いて壊す
骨を砕こうとしているのか
肉をちぎろうとしているのか
鍵型をしたくちの先に
引っかかってばかりいて
なかなか作業ははかどらない
かもめのゆりこ
いつまでも
トントントンと肉を砕く
人が来ても逃げられない
大切なカレイを何とかしなくちゃ
いつまで経っても進展しない
作業に飽きて大人たちは
キューっと一声喚き残して
餌を探しに何処かへ行った
かもめのゆりこ
堤防にひとり
冷たいみぞれも降ってきて
さあ、も一度頑張るぞ
首をすいっと持ち上げた途端
しっかり刺さった平らな魚は
嘴と一緒に持ち上がり
そしてあっという間もなく
冷たい海の中へ落ちてった
かもめのゆりこ
ビーズの瞳で一点を見つめ
猛禽のような鋭さで
ギエーっと三度激しく啼いて
まっしぐら
港の向こうへ消えてった
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