オホーツク移住生活
正月二日

- 正月
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正月二日日記 2006年01月04日
師走は雪ばかり降っていたものを
明けた正月はひとひらふたひら舞う気配すらなく
間近に見える山の真っ白な枝枝に
からりと遠くまで澄んだ青空が映えて美しかった
気温も暖かくうらうらとしたとても良いお正月だったのだ
二日の昼下がり
しんと静まり返った町のどこぞから
トントララ、トントララ
軽妙な太鼓の音が響きながら近づいてくる
あれどこかで催しか、と思って窓から覗くと
小学生から高校生くらいまでと思しき子供が数人列を成して
ブレーメンの音楽隊の風情で
何か陽気に言い合いながらこちらの方へ歩いてくる
先頭に立つ人を見ると赤赤と光る獅子舞の頭を支えていた
「あれ、獅子舞だ、獅子舞だ」
ちょっと声が高くなって
同居人と二人折り重なって窓から身を乗り出してみる
獅子舞だなんて、殆どテレビでしか見たことがない
「どこかで奉納するのかなあ。
こっちへ来るんだから裏のお風呂屋さんかなあ。
へえ、凄いねえ、獅子舞だ、獅子舞だ」
と、なぜかこういうことは異常に喜ぶ私
キリキリと冷えた空に子供たちの談笑と獅子の頭の光る赤だなんて
晴れがましくって嬉しいのだ
最後尾を、なんだか凄く高齢のおじいちゃんが
袋か何かをぶら下げて少し離れてついてゆく
世話役の人とか、そういうのかなあ
角を曲がって見えなくなった
太鼓の音だけが響く、トントララ、トントララ
何処行ったのかな、だなんて話を一人でしばらく上機嫌にやっていたそのときに
「あけましておめでとうございます」
という張りのある声が我が家の玄関の中で突然聞こえ
あ、いや、まさか、そんな、ね
かなんか訳の分からないことを考えつつ
転がり出るようにして玄関の戸を開けると
案の定というのかなんというのか
目の前でいきなり獅子がでかい口をパッカパッカ開けたり閉めたり
しているわけである
唖然として獅子頭を見つめていると
それはうつぼのようにすーっと玄関口から後じさりしていなくなってゆき
唖然とし続けていると
先ほど最後尾を歩いていたおじいさんが入ってきて
「明けましておめでとうございます」か何かを言った。
手にした家内安全祈願のお札をくれる
おめでとうございます、
とこちらは自信なさ気に答えてそれ以上何の知恵も湧かない
多分何か言うものなのだろうなあ、という気がするが
口をあけても言葉が思いつかずに
こちらこそ獅子のようになっているんである
おじいさんは玄関口に立って何事か待っている様子
と、おじいさんが手にした袋に沢山入っているものが
「祝儀袋に決まってるじゃないかっ」ということが素晴らしい勘を持って理解できる
「ご、ご祝儀、すいません。用意ないんですけど。裸でいいですか・・」
というようなかなり野暮な会話の後、やっとなんとか心付けを渡し、おじいさんもすっと消えていった
「ああ、何あれ。びっくりしたびっくりした」
太鼓がトントララと道を渡って向こうへ消えて行くのを聴きながら
そのあとひとしきり同居人と騒ぐことに相成ったんだが
実は私メは獅子が家にせめてきた気配の時点で驚いてしまい
柱の陰にヒシと隠れて片目たりとて出さなかったので
我が家の狭い玄関で起こった出来事の直接の目撃者は同居人一人であり
以上のことは聞こえてくる話し声と同居人の報告をまとめて
「まるで見たかのように」語ってみただけでした
びっくりすると隠れるんだもの、私
昔から
寡聞にして知らなかったのだが
小さな町では獅子舞が各家庭を巡るという風習はたまにあるようでございます
ああ、びっくりした
