オホーツクの花や風

オホーツク移住生活

春の煙突

suto-bu.jpg

  • この町では薪ストーブ使用率が非常に高いです。 田舎だから灯油の価格が高いというのと、みんなそれぞれ山を持っていて燃料にも困らないのでしょう。ホームセンターでも普通に薪ストーブが置いてあるのでびっくりしました。 特に今年は灯油が高くて薪ストーブの売れ行きが良かったのだととか。
  • 私もぜひとも薪ストーブにしたい、と思ったのですが、今のところは家を借りた時にすでにあった灯油ストーブをそのまま使ってます。冬季の灯油代は月に5万円くらい。およそ洒落になりません。
  • 【PR】ネットで副収入 GETMONEY! 私の田舎暮らしを支える副収入のひとつ。登録三ヶ月目くらいから収入になりはじめました。→解説サイト:ゲットマネー研究所

    → 春の煙突日記 2006年04月22日



    「何か居るー。何か居るー。」と
    朝から同居人がうるさいので、折角集中していたパソコンを放置して見にいってみた。
    ストーブの脇に立ってUFOを見つけた小学生のように煙突を指さして動かない同居人。

    ・・・何やってるの?
    「中に何か居るっ。音がする。」
    ・・・煤が落ちてきたの?
    「違う。
    ・・・・・カンカンっ(指で煙突を叩いている音)
    ・・・・静かだな。」
    凡庸な埃だらけの煙突の真下に立って、黙って見上げる二人。
    一冬消火することのなかったストーブを最近やっと時々消せるようになっていたのだ。
    今日は朝から消していた。
    そこに何か未知の物体が中に入り込んでいると信じて疑わない同居人、
    すくんだようにそこから動かない。
    しかし、二度と再び物音はしない。
    クリスマスはまだ半年以上も先だ。

    うーん、朝からちょっと莫迦らしい雰囲気になってしまった、と警戒する私。
    午前中の、こちらのテンション低い時間帯には
    詩情豊かな珍事など起こりっこないと決めている。
    何か面白いことが起こるなら午後に起こってくれ。

    煤の固まりが落ちた音に違いないと多寡をくくっている私の無関心を微妙に探知して
    もう何の物音も聞こえてこない以上、
    これ以上騒ぐのは大人の沽券に関わると、同居人、切なくも諦め掛かっている
    「そうだっ。こ、ここを空けてみよう」
    窓を開けて身を乗り出し、煙突の蓋をこじ開ける。
    言葉で言うのもなかなか分かりにくいが、
    ストーブから伸びてきた煙突は、そのまま水平に壁を貫通して外に出、
    そこで直角に曲がって今度は垂直に屋根の上まで伸びるわけで、
    その垂直の曲がり角のところが蓋になっており(恐らく煙突掃除の為)
    蓋を開けると真横に通り抜けができるようになるわけだ。
    恐ろしい熱心さでその風雪に晒されて固くなった蓋をこじ開けて
    手を真っ黒にしながら「どうだ」とばかりに再び煙突を眺める。

    同居人が眺める。
    乗りかかった船だから私も眺める。
    二人で眺める。
    いつまでも眺める。

    そうしてようやっと飽きてきた同居人は、このまましばらく明けておこう、とかなんとか
    心持ち残念そうに呟きつつ台所に真っ黒な手を洗いに行った。
    とりあえず、頭と身体の働きの鈍くなっている私は
    まだしばらくそこに呆然と突っ立って
    口の空いた煙突を眺めていた。

    ・・・・と、たった今空けた通り道から
    弾丸のように黒いものが突如飛び出してきて、
    バサバサバサバサッと手応えのある音を立てて上方へ高速で移動して行った。


    ぅわああーーっ
    いたーーーーっ
    とりいぃーーっ

    ついうっかり
    同居人が満足するに十分なけたたましいリアクションをしてしまう。
    いた?
    いたか?
    いたろっ?
    嬉しそうに駆け寄ってくる同居人。

    「あ、あ、あの電線に二羽並んでとまってるうちの真っ黒の方。」
    「おー、あれか。黒いな、わはは。」

    何の鳥なのか、
    冷静じゃなかったのと
    ちょっと遠かったのと
    あまりにも煤だらけだったので
    よく分からなかったのだか
    燕みたいな感じの小鳥だった。

    真っ黒な羽を気にして懸命に毛繕いしている
    連れ合いも、にじり寄っては黒い羽をくちばしで構うのだが
    どうも決定的にナーバスになってしまっているのだろう
    「ちょっ。やめてくれよっ。」という風情で
    チョンチョンと、跳ねて逃げたりしている。

    「あんなに黒くなって大丈夫かな」
    「鳥は飛べれば大丈夫だよ」
    重大な人助けをしたかのようになぜか気持ちよくなってしまうふたり。
    我が子を見るようなまなざしでしばらく見守っていたが
    やがてカップルは遠くへ飛んでいって見えなくなくなった。

    「ねえ、やっぱり恩返しとか来るのかな」
    「来ないよ」
    「背中に金のつづらとかしょってさ・・・」
    「来ないってば」
    「でももしかした・・・」
    「来ないっ」


    ・・・はい。

    Copyright (C) nora.All right reserved.