北海道の遊歩道
滝上公園

- 滝上公園
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滝上公園日記 2006年05月19日
私が住んでいるところというのは
全国でも有数の芝桜群生地、という町で
丘をひとつ、丸ごと公園にして
その斜面一面どーっと芝桜が植えてある
満開時期の写真をみると目が痛くなる程の真っピンク、という
そんな丘の真下に建ってるのがあたしんち、なんであって
芝桜の雪崩れ、なんていう自然現象があるとしたら
たぶん私が町で一番最初に芝桜による窒息死をしてしまうだろうという
結構光栄な場所に住んでいる
色々な人が遠くからわざわざ観光バスに乗ってやってくるその芝桜公園に
私はスニーカーのかかとをふんで
ズボンのポケットに手を突っ込みながら
仕事に飽きてきた午後なんかに毎日開花状況を見にいくのだけど
行くたびにその公園は着々とピンク色で
それから少女のぼんぼりみたいなうす紅色の桜や
クリーム色の水仙や薄青色のエゾエンゴサクなんかも
ひましに色鮮やかになって
ますますパッチワークを広く広く綴っていく様子が
昨日も今日も毎日見える
観光客が通らない方の
急坂で足下の悪い細い道を歩きながら
熱くもなく冷たくもない
肌を撫でるような風をたらりたらりと楽しんでいたら
ちょうど真下からふわっと起こったその風が
まさに芝桜の濃い甘い匂いをその中に強く含んでいて
ああ、風が甘いと思った瞬間
不覚にも思わず泣きそうになったのだ
どうして風が甘いと泣くのかなあ、と
丘の上から小さな町を見下ろして
ひとりでぼんやり思ったのだけど
そのへんの所はたぶん
やたら理由をつけても仕方ない訳で
綺麗な物に対する感受性ってやつは
私はかなり低下していると思うのだ
想像を絶する程綺麗なものというのは
どんな秘境にあるものでも
必ず世界の中の誰かが既に見に行っていて
映像やら写真やらというものが決まってどこか安全なところにある
挙げ句の果てにそういうものをこちらが見たいと望むより先に
目の前にどんと突きつけられて、きれいでしょ、と言われたりもする
生まれた時からだいたい世界はそんなんで
いったいどこのどういうものが本当に美しいのか
その辺の想像力は慢性的な過保護の為にまったく自立していない
いつ見ても揺らぎ無く綺麗なもの
普遍的に頑丈な綺麗なものばかり
世の中にあふれかえっているような気がして
はいはいどうせ綺麗なんでしょ、と
思ってひねくれていたりするのだ、本当に
初雪の時もこの丘に登り
真冬の日にもこの丘に登り
雪解けの季節もこの丘に登り
まだ何にも無い丘を見て
早く花が咲いたらいいのに、と
私はここで半年の間、何回も花の姿を願ってた
春の風の中に花の姿を見て
不覚にもちょっと涙ぐんでしまった
私が待った
花の咲く春
