北海道カヤック旅
クッチャロ湖
- クッチャロ湖
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クッチャロ湖日記 2006年08月02日
クッチャロ湖畔のキャンプ場は北海道でも人気の高い場所の一つで、私もお気に入りだ
いかにも北海道らしい、あまり変化のない道をまっすぐ突き進んだところにある
大きな湖に面した雰囲気の良いキャンプ場で
丸一日なにもしないで湖面を見ながら珈琲を飲むにもふさわしい
私はこのキャンプ場でわざわざ好き好んで台風の中にテントを張って
一日呆然としていたことがある
静かなところに朗々として沈む湖というのはなかなか見応えがあるのだ
いつも見ているばかりのクッチャロ湖へこぎ出そうと、出掛けていった。
キャンプ場のはずれにある水鳥観察センターの前にも桟橋があるのだけれど
ここから出航するのはちょっと目立つので
キャンプ場のさらに奥へ砂利道を入っていく。
大きな駐車場と、番屋と、無人の水鳥観察舎がある。
午後の時間、もう番屋に人は居ない。
働きものの匂いだけが古びた小屋からほんわり漂ってきている。
それから小さな桟橋と、そこに強運丸という素敵な名前の小舟が一隻だけつないである。
強運丸の周辺にカモメが五羽ほど浮かんで、甘えたような鼻に掛かった声を出していた。
カモメは案外イメージより大きくて眼光鋭い顔をしているし、くちばしも鋭くてよく見ると結構怖いのだけど
でもぼってりして丸っこくて真っ白な体をして潮の香りの中を気持ちよく飛んで美しくもあって、
私が思うに、カモメは女性の鳥なんである
鳥の中ではちょっと魔性のヤツら、の部類。
何を訴えているのか、不思議な声でしきりに鳴くカモメの妖しい声を聞きながら
朝焼け色のカヤックを組み立てて、桟橋から乗り出した。
大沼と小沼が連結するひょうたん型のこの湖は東側がオホーツク海に向かって流れ出している
海へと流れ出るクッチャロ川を海に向かって進んでみた
途中に車の通れる橋が掛かっているのが、よく見ると橋脚の形がなんだか妙に古めかしい
どっかで見たことがある形なんだよなあ、と思ってよくよく考えてみると線路の橋桁の形だ
地図を見ると確かに、この川を渡って天北線という路線が走っていたらしい
きっと線路を取り払って道路に付け替えたんだろう
小さな一両か二両くらいの列車がタンタンタンとこの川の上を走ったのだなあ、と思って見上げる
今は車の通らない小さな橋
ところどころに流木が散在する川をぼんやりと下っていると
倒れた木の上にあの、大好きな真っ青なシルエットがじっとしていた
相も変わらずきらきらと青く光って
ちょっと寸詰まりのような、頭が大きくて尻尾の短い可愛らしい姿をして
じっと川をのぞき込んで静かにしていた
カワセミだカワセミだカワセミだ
と小声でこらえ性もなく騒いでみたけれど
さほど驚く様子でもなくじっとじっと考え事を続けて、そしてぱっと思い出したように
水面に沿った低いところを素早く飛びさって行った
じっとしていても良いけど、飛ぶ姿もやっぱりいいなあ
カワセミは良いなあ
のんびりとした流れをどんぶらどんぶらと進んでいく
やがて潮の匂いがしてくるあたりで頓別川と合流し、すぐに河口
カヤックで海へ出るのは実は初めてで
湖と川と海が繋がっているというのは、実際見るとなかなか驚きだった。
うーん、本当に海があったなあ、地図というのはまあなかなか結構合ってるものだな。
ゆらゆらとカヤックは上下左右に揺れている
非常に凪いだ海の、ほんの少し潮が流れこんでいる程度の静けさなのだけど
ちょっと心の中に恐怖が横切る
このまま流されたらどこまで行くだろうなあ・・・
ささ、帰ろうか、帰ろうか
おっかなくなんか無いような振りをしつつ取って返して湖へ向かう
一旦強運丸の港に帰り、この日は舟を引き上げておいた
大沼と小沼は翌日の朝から回ることにする
翌朝、深い霧が晴れると一キロほどの細い水路を通って隣の小沼の方へこぎ出す
水路には小さな番屋があって舟が数隻と網などが置いてある
なんか格好良いプライベートハーバーだなあ、と思って見ていると
つないである舟の陰からなぜか突然小さなカモがちょこちょとと一羽だけ泳ぎ出てきた
まだ毛のパヨパヨした子カモが、なんでたった一人でこんなところを泳いでいるのか
あんまり気になるものだからちょっと離れて追いかけてみる
しばらく、気にしてるようなしてないようなそぶりで泳いでいたけれど
突然決心したようにばしゃっと音を立てて頭から葦の茂みに飛び込んで
それから、そのまま
しばらく待ってみたけれど、もう全く物音もない
お母さんのところに、ちゃんと帰ったろうか
勿論無事の便りも来ないので、どうしているか分からない
水路を渡りきった小沼の方は水草が沢山生えて居てオールに絡むので岸辺に近づけない
湖というのは森に近い岸辺でないと、何も無くて結構退屈をする
クッチャロ湖の周辺は湿地が多く、葦ばかりであまり変化はないようだ
流れとてとくになく、うらうらと暖かい昼下がり
舟の中に長々と寝そべってそのまま直射日光に顔面を晒しながら気持ちよく昼寝をしてしまう
思う存分眠ったら、あまり変化がなさそうに見える小沼は回らずにそのまま水路を帰って、
大沼を南岸伝いにぐるっと回ることにした
南岸は馬の背のような形の丘や張り出した木々などがあって
結構面白い風景なのだけど、極端に浅くて岸に近づくのは難しい
小さな魚を捕る罠があちこちに沈めてある
きっとえびの漁だろうなあ、と殆ど根拠のない断定をした
毎朝、強運丸が回ってきてるのだろう
浅いところにアオサギと、もう少し小型の真っ白なサギが点々と並んでいる
一番体の大きいアオサギが、いつも最も神経質に人間との距離を取っている
そして恐竜の姿で頭上の空を飛ぶ
湖を見に来た観光客の視線に少々照れながら
岸伝いにキャンプ場の目の前を横切って
強運丸の桟橋へ帰ってくる
オホーツク海沿いの海跡湖というのはどれもみんな凄く浅いようだね
今度はどこへ何を見に行こうかねえ

