北海道の遊歩道
大雪高原温泉沼めぐり

- 大雪山高原温泉沼
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大雪高原温泉沼めぐり日記 2006年09月18日
大雪山緑岳の南側には大小含めて20程の沼があり、
ぐるっと周遊できるコースがある
カヤックを乗るのようになってから沼とか池という言葉が妙に気になるようになったこともあり
まあ、行ってみようかな、となった
雪崩れ落ちるように秋に向かっている北海道
今行かなくっては春まで遠足はお預けじゃないか、なんていう
四季の巡りの囁きが山道から響いてくる熊鈴のように耳に残って
この季節、私の落ち着きを無くさせる
大雪山高原温泉沼めぐり
ぐるっと一周すると7キロ程度、山道を約三時間の行程だと言う
狭い砂利道をぐらぐら揺れながら高原温泉駐車場に到着
場内に建つヒグマ情報センターが入り口になり
ここを通らなくては入林できないようになっている
そのヒグマ情報センターには良い具合に浮き世から隔絶した雰囲気の
長髪痩身細縁メガネのお兄さんが座っており
まず入山届けに記名するように言われる
それからコース地図を取り出して、ざっと説明をしてくれるのだが
現在は熊の出没によって周遊コースの右半分は通行禁止になっている
左回りでだいたい三分の二くらいの地点、高原沼まで行くことができるが
同じ道を通って帰ってきてください、と言われる
ふむふむふむ、とそれほど表情豊かとは言えないお兄さんの顔を見ながら説明を聞く
これが案外長いのだ
機械的に「これとこれとこれが注意事項です、ではっ!」と言って送り出されそうなものだが
お兄さん、じっくり考えながらじっくり喋ってくれるのだ
ここは熊五頭分の足跡が観察されてるので現在閉鎖になってます
ここはミズバショウを食べた跡なんかがあります
ここは今朝足跡が観察された所で、多分まだついてます
ここは見晴らし悪くてばったり会うと三、四メートルの距離で目が合うので、多めに鈴を鳴らすなりしてから入ってください
草間に隠れていて人間が通り過ぎてから道を渡ったりしてますんで、意外と近くで見られてるんだな、と思っててください
食事がとれるのはこことここの二か所。行動食も含めて熊の見てるところで食べるのは辞めてください
今のところ人間に餌をねだるような熊は出ていないので、無駄に刺激はしないように
などなど
面白い話だったので気に入ってしまったのだが
どうもお兄さんは熊が好きらしく、ここに熊が出ました、という時に
ボールペンで地図を示しながら唇の両端が嬉しそうに微かに上がるのだな
一見さんが多く、時には随分マナーにだらしないことのある人間よりは
嵐の時も雪の時もこの山で生きて、自分の住処として大切に山に暮らす熊の方が
もしかするとお兄さんにとっては親しみやすいのかもしれない
なんてことを考えながら
大雪に暮らす熊たちに、こんにちは、こんにちは、と心で唱えつつ入山
標高はあまり高くないので紅葉にはまだ少し早い景色の中を歩く
どうも熊ばっかり気になるもので
今、私のこと見てたかなあ、と思って草丈高いところでわざわざ振り向いたりする、
なんだか子供の遊びのようなことをしながら登った
ところどころは湿原の風景に似る
短い草の中に山の瞳のように静かでじっとしている水たまりが空と木々とを映して沈む
花は終わったものが多い景色の中で目を引く華やかの濃い青はエゾオヤマリンドウ
きゅっと先のすぼんだ形をしているので
どうしてどれもこれもみんなつぼみなんだろうと思っていたら
これはそもそもつぼみみたいな形の花なのだとか。
小川の流れる両側に咲くのはハンゴンソウの黄色だ
それぞれ少しずつ終わりに近づいた朽ちかけた色をしている
花は、終わっていく姿も、どこか惹かれるものがある
温泉の匂いのする小さな川が流れる横で
小くモロモロとした黄色が、さほどゴージャスではなしにのどかそうに揺れる
まるでいつかここに来たかのような、五感に懐かしい錯覚に一瞬ふっと囚われる
どこかで一度あったかのような、よくある秋の景色
標高が上がるにつれ、沼を取り巻く木々に少しずつ赤みが差してきて
水面に映る色彩も面白みをましてくる
最終地点高原沼で、遠く大雪の山々を彩る赤を見ながら休憩し
またゆっくりと来た道を戻った
紅葉にはどうやら早かったようだけど
お陰でまだ静かな高原沼巡りを楽しむことができた
どうやら熊たちも脅かさずにすんだようだね
ヒグマ情報センターのお兄さんと静かなる友情育む熊たちよ
どうかどうか静かに幸せに暮らしていけるように
(紅葉情報の参考までに。登ったのは9月16日のことです)
