オホーツクの花や風

北海道の遊歩道

大雪山旭岳登山

ナキウサギ

  • 標高2290m 北海道の最高峰
  • 五合目1600メートル地点まではロープウェイで行くことができます。ロープウェイ姿見駅から山頂までは二時間程度。
  • 山頂部分は真夏でも予想以上に寒くなります。防寒はしっかり。
  • 下りが相当に滑り易いので底のしっかりした靴が安心。登りより下りが危険ですので無理は禁物です
  • 給水は麓の旭岳温泉駅で行います
  • 氷河期にシベリア大陸から北海道に渡ってきたと言われる「生きた化石」ナキウサギが生息します。警戒心が強いためなかなか見られないそうですが「ぴきっ」というような鳴き声は岩場で時々聞かれるそうです
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    → 大雪山旭岳登山日記 2006年09月19日



    大雪山系の山々で標高が高いにもかかわらず旭岳が手軽であるのは
    五合目までロープウェイで10分で到達してしまうという凄い山だから
    カムイミンタラ、神々の遊ぶ庭と呼ばれた土地で
    1600メートルの高さまで、大量のエネルギーを使って、本来山には必要ない数の人とモノを大量に搬入して
    それはどうなの?ってことは、勿論考える訳なのだが
    「ちょっと時間あるから、旭岳登れるなあ」という話になると
    ああ、半日で登れちゃうんだ、それは凄いな便利だな、というのもまあ真実で
    考えるよねえ、この風景ってなんなんだろう、確かに壮観ではあるねと
    101人乗りのロープウェイにぎゅうぎゅうに押し込まれ
    緑と赤のコントラストも見事な山肌を見下ろしながら何か不謹慎な予感に襲われて考え込む
    背中の荷物は降ろして乗ってくださーい
    トイレは上の駅で最後だから必ず済ませておいてくださーい
    帰りはもっと混むからお急ぎの人は早めに下山してくださーい
    と、スタッフジャンパーを来たお兄さんが看板担いで叫んでいる
    うーん、なんだこれは、なんだこの小学生の遠足のような風景は
    これで本当に私は神の庭なる山へ向かうのか


    「私昔から思ってたんだけど、自信ないから黙ってたんだけどさ
    世界にたくさん綺麗なものがあるってのは分かってるけど
    綺麗ってトコロだけ取り出して「さあ綺麗でしょ」って言われると
    実は殆ど良さがわかんないのよね
    山とか海とか川とか結構好きなんだけど
    海だったらあの磯臭い匂いが好きとかね、波に身体を揺られる感じが好きとか、太陽がじりじりするのが好きとか
    山登ると車の音と匂いがしないから好きとか、山頂で珈琲呑んでご飯食べるのが好きとか
    川は手足突っ込むのが好きとか、中で洗濯するのが好きとか
    だいたい肌で気持ちいいから好きな訳ね、別に綺麗だから好きなんじゃなくって。
    まあ、綺麗なことも良くあるんだけど。
    さあ綺麗でしょ、素敵でしょ、って言われるとさ
    綺麗なのは分かるんだけど私の五感にとってそれはなんなのよ、って思っちゃうわけ
    「見た目が綺麗」って事に関して感性薄いのね、きっと
    たとえばさ、ガラス張りの箱に101人で乗り込んで
    目の前に知らない人の大きな背中があってその先先に頭がいくつもあって
    その頭の間から目を光らせてガラスの向こうを見ると眼下に壮大な山の風景が広がっていて
    山頂から紅の帯がさっと走って麓に降りてきていてああ綺麗だな、と思ったら
    左隣でご婦人が旦那様に「まあ綺麗ねえ」って既に言い終わっていて
    箱の中で流暢なアナウンスでこれが何メートルのこんな山、って説明を延々しているけど
    誰も聞いてなくててんでに喋ってるからアナウンスの声は話がとぎれとぎれで
    時々箱がカタンと揺れるからとりあえず両足踏ん張りながらよろよろと十分間ヤジロベエしてる私にとって
    紅葉が綺麗って一体なんなのだろうかって結構そういうこと考えたりするね
    なんだか不思議な気分だったのよ、うん」


    山の中腹に姿見の池という池があるのにちなんで姿見駅と呼ばれる駅でゆっくりとロープウェイはとまる
    五つの展望台と池があってアップダウンのあまり無い1.7キロ一時間ほどのコースの周遊を楽しむ人と旭岳山頂を目指す人
    どちらもなかなか沢山の人がいるのでしばらくうろうろして時間をずらし
    山頂組の最後尾くらいを狙って登る
    さすがに行列こそしていないけれど、随分と人は多い
    みたところ、高齢のご夫婦が多いのだ
    それから子供を背負ったお父さんなんて強者もいる
    こどもは間近に見える地獄谷の噴煙活動が気に入ったらしく背中の上で「しゅーっ、しゅーっ」と
    ご機嫌で独り言をしている
    お父さんはもちろん、もうかすれた声さえ出ないでひたすら汗を流しながら登っている
    頑張れ、父さん

    遍路杖を手に登る人がいる
    スキーのストックを夫婦で一本ずつ持って登る人もいる
    竹竿持って登っている人もいる
    途中の岩に座って休みながら、ねえもう帰ろうよ、とご主人を説得している奥さんがいる
    見回したところどうやら私が一番若い様子なので
    ザックザックと格好つけてごぼう抜きで登る
    疲れてへばって膝痛いことはばれて居ませんように
    登りにいったのか見栄を張りに行ったのか、どうもよく分からない自体になってはきたけれど
    なんたって一番若いですからね

    真夏でも凍死者が出ることもあるという大雪の頂上はやっぱり随分寒くて
    登り切った時には手がかじかんでいる
    ウインドブレーカーを出して羽織って
    暖かい珈琲をポットから注いでパンを齧る
    目の前でわざわざガスストーブを持ってきたご夫婦はお湯を沸かしているのだけど
    標高2290mではガス圧が低いのか、いっこうに湧く気配がないのがおかしい
    時々縦走する人たちが尾根伝いの道へ消えていく
    遮るもののない空の向こうから真っ白にガスが流れて来て山を取りまき
    またぐんと気温が下がったようだ

    来た道を下る
    どんどんどんどん人が登ってくる中を
    滑りやすいので気をつけながら行き交う
    もとより下るのが苦手な私は浮いた軽い石で4.5回ひっくり返りながら
    足の悪い亀のようにずるずると降りていく
    すぐ脇をまるで平地を歩くようにザッザッと大股で下って行く人がいるので見たら
    緑の腕章をしたパークレンジャーの人
    まるで仙人様のような足取りが、痺れるように格好良い
    どこまでもついて行きたいものだ、と思ってうっとり見とれたが一歩も追いつけなかった

    麓から子供を負ぶってきたお父さんとすれ違う
    お父さんは麓の時よりさらに凄い形相をしているなあ、と思ったら
    後ろから来たお母さんは疲れ過ぎて目が泳いでいた
    背中の子供はジャンパーを沢山巻き付けられて寒そうな不服そうな顔をしている
    頂上までもう一息、せめて子供が喜ぶといいねえ

    下るにつれ、暖かくなってくる
    頂上で着たものをまた一枚一枚脱いでいく
    さっきまでいた山のてっぺんを見上げるといつの間にか流れてきた白いガスにすっぽりと包まれていた
    頂上は霧だから、と途中で引き返してゆく人も何組か
    五合目の姿見駅が近づくほどなんとなく賑やかさがましていく
    人が増えるし、みんなまだ比較的元気だから良く喋って賑やかだ
    駅近くに作られた、この山であった事故を悼み安全を願う慰霊碑の鐘の音も響いてくる

    その最高に賑やかな駅を今度は素通りして
    ロープウェイを尻目に登山道を使ってゆっくりと降りることにする
    ホシガラスが一人で遊ぶ、しんと静かな山
    見晴らしはあまりよくないけれどうってかわった山らしい静けさで
    すれ違ったのは一組のカップルだけだった
    本当はまだもっともっと静かだったのだろうかね
    あのロープウェイはきっと色々なものを沢山変えたのだろうね

    カムイミンタラ
    神の遊ぶ庭

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