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じいちゃんの斧

斧

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→ じいちゃんの斧日記 2006年11月07日

丸太を割るのに、家のナタでは間に合わなくなって
裏のじいちゃんの斧を借りてきた

斧なのだから重くて当然なのだけど
本当に見た目より重くて
とりあえず咄嗟に片手で持てなかった
フン!と振り上げようとしても腰より上に上がらない
柄の真ん中あたりに握りなおしてもう一度力んだらあがったのだけど
今度はそのまま斧の重さで後ろによろめいた。
踏ん張りなおしておりゃっと丸太の上に打ち下ろしたら
衝撃を抑え切れなくて跳ね返された
丸太の上で斧がツーバウンド

一センチくらいやっと斧が食い込んだその割れ目から
じゅわっと白い樹液が一瞬溢れ出して染み込む
草のような若くて新鮮な木の香りがふわっと立つ

今度は丸太に食い込んだ斧が抜けない
丸太の上に足を載せて両手で斧を抱えてフンっフンっと引っ張る
フン!よろっ、おりゃっ!ふんっふんっ・・・。
という一連の流れを繰り返すこと五分ほどで表面が傷だらけだけど
形はちっとも小さくなってない丸太がそのまま、いまだ目の前にあるわけだ
しかもこちらは肩で息をしている
NHK放送「大草原の小さな家」では
薪割りってもっと格好いい仕事だったのだが
偉く勝手が違うもんだな

冬に間に合わないからとりあえずお前はやめておけ、
という同居人の冷静な判断のもと
私は敢え無くく薪割り中退
川から拾ってきた細い流木を鋸でぎーこぎーこと挽く係りに任命された

松脂でべたべたになったじいちゃんの斧は
手の当たるところが垢で黒くなっていて
まるで斧が自分自身で何十年も汗をかいてきたかのような
重ね重ね塗りこめたような複雑な模様になっている
こういう刃物は扱いの下手な人が使うと凄く寿命が短くなるらしいね、と同居人が言った
ああ、そうだ、ソローも家を自分の建てるときに友人から斧を借りる様子をわざわざ書きのこしていたな
きっとじいちゃんは大切なものを貸してくれたんだろうなあ

なかなか思い出すよすがもないのだけれど
北海道という土地はどこも開拓百年くらいの若い土地だ
きっとじいちゃんのこの斧は
まさに北海道を作る仕事をしてきたんだろう
だから今では、私みたいな殆どなにも考えてない子供がいきなりやってきて
いやーん、斧重い〜
なんて馬鹿なことを言いながらレジャーみたいな暢気な田舎暮らしができるほどの豊かな土地になっているのであり
それだけの下地を作って用意してくれたのは
多分じいちゃんが握ったこの斧なのだ

斧をじーっと見ていたら
ちょっと困惑するような気持ちになってきて
だからそっと部屋まで運んで
じっくり見ながら絵を描いてみた
じいちゃんの斧

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