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帽子

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→ 帽子日記 2007年02月19日

「こんにちは」
とばあちゃんはいつものように
直角に腰を曲げたまま冷たい玄関に入ってきて
「これ・・・」と言いながら
白いビニールの袋から何か柔らかそうなものを取り出した

鉤針編みの帽子
水色と、殆ど蛍光に近いくらい鮮やかな緑

「・・・・?」
「これね、私が編んだのじゃないけど」
「・・・はい」

「洗うときはね、絞らないで」
「・・・はい」

「私には少し派手だから被んなさい」
「・・・はい」

確かにばあちゃんも同じ形で
でも蛍光緑は入っていないニットの帽子を被っている

言いながらばあちゃんはまた直角に腰を曲げて
冷たい玄関からマイペースで出て行った
「あ、そこ凍ってますから、気をつけてください」
「はい、はい」
「あの、いつもありがとうございます」
「はいはい」


ばあちゃんがいなくなってから
その”少し派手な”帽子を
手の平においてじっとみてみる
紛れもない人の手でひとつひとつ編んだ
暖かそうなもので

でもばあちゃんは知らないのだ
こういうのはばあちゃんだから似合うってことを

私には「駅ビルに入っているナントカって店で買った
ウン万円の皮のハンチング」なんてものが
もうすっかり文化的に正当化されたものとして
頭の中に刷り込まれてしまっていて
蛍光緑の模様の入った鈎針編みの帽子は
今更その頭の上に載せても似合わない

記念に
膝の上に載せて
お絵かきをした
今でも毎年鉤針編みで
毛糸の帽子を編む人たちがいるなんて
知らなかったな

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